COLUMNコラム
COLUMN 02
「アルコールは歯に悪い?」飲酒とマウスウォッシュの注意点
ジョークで「アルコール消毒」なんて言葉を耳にしますが、実はお口の健康や歯にとっては、アルコールはダメージになり得ます。
お酒の席で、ふと近づいたときに「あ、少し口臭が気になるかも……」と感じてしまったことは正直ありませんか?今回は、飲酒が歯や口臭に与える影響と、市販のアルコール入りマウスウォッシュの落とし穴について、歯科医師の視点から詳しく解説します。
1. 飲酒が引き起こす、お口の3つのリスク
お酒を飲んでそのまま寝落ちしてしまった……という経験がある方もいるかもしれません。実は飲酒そのものというよりも、飲んだ後にいつもどおりの丁寧なケアができず、口腔内が不衛生になることが大きな要因です。
① 歯周病の進行と口臭の悪化
血液検査の肝機能の指標として知られる「γ-GTP」は、実は歯周病の重症度とも深く関連していることが分かっています(※1)。
大量飲酒者の口腔内では、重度の歯周炎を引き起こす細菌(P. gingivalisなど)が大幅に増加することが報告されています。歯周病原細菌はタンパク質をエサにして分解し、硫黄ガス(VSC:揮発性硫黄化合物)を産生します。これが口臭の正体です。
また、過度な飲酒はビタミンやミネラル、タンパク質の不足を招き、胃や肝臓への負担から栄養の吸収が妨げられます。歯を支える骨(歯槽骨)の代謝には十分な栄養が欠かせず、栄養不足になると骨の破壊スピードに新陳代謝が追いつかず、最終的に歯を支えきれなくなってしまいます。さらに、飲酒の場では喫煙がセットになりやすく、血流の阻害や免疫低下を通じて歯周病をさらに加速させます。
② 唾液量の低下とむし歯リスク
お酒を飲むと、アルコールの利尿作用によって体は一時的な脱水状態になります。脳が水分不足を検知すると、体内の水分量を保持するために唾液の分泌量がグッと減少します。唾液が減るとお口の中の酸性度が下がり、むし歯の細菌が増殖しやすい悪循環が生まれます。お酒を飲むときは「お水を片手に(WOC:水・お酒・チェイサーの習慣)」を意識することが、歯を酸から守るうえで非常に有効です。
③ 発がん性のリスク
アルコールが体内で分解されてできる代謝物「アセトアルデヒド」は、国際がん研究機関(IARC)によって最高ランクのグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に分類されています。毎日の継続的な飲酒は、口腔・咽頭などのリスクを高めることが科学的にも指摘されています。
2. 飲酒量を減らすには
適正な飲酒量を守るのは、お酒好きの方にとってはなかなかシビアな問題です。
ストレス環境と依存性
お酒やタバコは、過度なストレスがかかる環境下で依存性が高まることが知られています(※2)。日々の忙しさや精神的負担が、無意識の過度な飲酒に繋がっているケースも少なくありません。
ライフスタイルの工夫
仕事帰りで疲れた夜やリフレッシュしたいときは、ノンアルコール飲料(ノンアルコール・ハイボールなど)を上手に活用するのも、お口の乾燥やアルコール摂取を控える賢い方法です。
3. アルコール入りマウスウォッシュは本当に効果的?
「アルコール=強い殺菌」というイメージがありますが、実は注意が必要です。
プラーク(バイオフィルム)は除去できない
細菌がスクラムを組んで膜を作っている「バイオフィルム」の内部まで、アルコールが浸透して破壊することはできません。表面をスッキリさせたつもりでも、頑固な汚れやプラークには不十分です。
二次会での口臭対策は「ブラッシング」が一番
飲食店やバーのトイレ等でエチケットを気にする場合、マウスウォッシュだけに頼るより、短時間でも歯ブラシで物理的に食べかすや汚れを落とす方が、口臭抑制には圧倒的に効果的です。
マウスウォッシュは「仕上げのリンス」として
市販のノンアルコール系製品(CPCやクロルヘキシジン配合など)は、物理的なブラッシングのあとに使用することでコーティング効果を発揮します。シャンプーのあとの「リンス」と同じ感覚で取り入れるのが正解です。
顔をそむけたくなるような口臭の原因は、「たまたま直前に歯を磨かなかったから」ではありません。多くの場合、日々のセルフケアのすれ違いや、しばらく歯科医院でのクリーニングを控えていたことに起因します。お酒や美味しい食事を楽しみながらも、2〜3ヶ月に一度のプロによるメンテナンスと正しいケアを習慣化すれば、他人が不快に思うような口臭に悩まされることは基本的にはありません。
お酒を心地よく楽しみつつ、ご自身の息と歯の健康を守りたい方は、ぜひ当院のオーラルケア・クリーニングをご活用ください。
(引用)
(1) Gandhi UH, et al. Alcohol and Periodontal Disease: A Narrative Review. Cureus. 2024.(2) Ball J, Darby I. Mental health and periodontal and peri-implant diseases. Periodontol 2000. 2022.
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