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COLUMNコラム

COLUMN 04

マウスピースだけでは治らない?歯科医師が解説する「歯ぎしり・食いしばり」の本当の原因と対策

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「歯はダイヤモンドより硬い」と言われることもありますが、硬さと脆さは別問題です。せっかく高価なセラミックを入れたのに割れてしまったり、ご自身の天然の歯が欠けて抜歯になってしまうケースは少なくありません。

その大きな原因となっているのが、無意識に行われる「歯ぎしり」や「食いしばり」です。自分の噛む力で自分の歯や骨を破壊してしまうこの現象は、もはや現代病と言っても過言ではありません。

「歯ぎしりの原因はストレスです」とお伝えすると、多くの方は笑われます。しかし、ストレスと脳神経のメカニズムをお話しすると、皆様ハッとされます。

今回は、単なるお口の癖ではない歯ぎしりの本当の原因と、歯と脳を守るための具体的な対策について解説します。

1. 歯ぎしりは「脳からのSOS」

歯ぎしり(ブラキシズム)は、咀嚼筋(噛む筋肉)が過度な緊張を起こしている状態です。かつては「噛み合わせの悪さ」が原因とされてきましたが、現在ではその説は否定されており、自律神経や中枢神経(脳神経)の乱れが引き起こす現象だと考えられています。

過度なストレスが「脳のブレーキ」を壊す

人間の脳には、記憶を司りストレスホルモンを抑制する「海馬」と、感情や恐怖を生み出す「扁桃体」があります。 長期的なストレスにさらされると、海馬の神経細胞がダメージを受け、ストレス反応を抑えきれなくなります。すると、扁桃体が過剰に活性化し、顎の筋肉を動かす神経(三叉神経運動核)に直接的な指令を出してしまい、無意識のうちに強力な噛みつき(歯ぎしり)が生じてしまうのです。

同時に、スムーズな運動制御や痛みの抑制に必要な「ドーパミン」などの神経伝達物質も枯渇するため、より痛みを感じやすく、顎の筋肉が過緊張を起こしやすい負のスパイラルに陥ります。

2. 睡眠中の歯ぎしりを引き起こす要因

寝ている間の歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)は、心身の不調を知らせる重要なサインでもあります。度合いによっては、以下のような要因が複雑に絡み合っています。

メンタルヘルスと性格傾向

不安やうつ傾向、または「負けず嫌いで常に時間に追われている(タイプA)」性格の方は、交感神経が優位になりやすく、睡眠時歯ぎしりが多いとされています。

睡眠の質(睡眠時呼吸障害など)

「睡眠時無呼吸症候群」など、眠りが浅く途中で目が覚めやすい状態(睡眠効率の低下)は、歯ぎしりと強く関連しています。いびきや日中の強い眠気がある方は要注意です。

全身の炎症とライフスタイル

高血圧や胃食道逆流症(逆流性食道炎)、慢性的な全身の炎症が歯ぎしりを悪化させます。また、寝る直前のスマホ操作(スクリーンタイム)、過剰なアルコールやカフェイン、タバコも睡眠の質を下げる大きな要因です。

3. 歯と脳を守るための「3つのアプローチ」

歯ぎしりそのものを完全に止めることは難しいため、症状の度合いに合わせて多角的にアプローチすることが大切です。

① 歯科医院での「物理的な保護」

  • ナイトガード(マウスピース): 就寝時に装着し、歯同士が直接ぶつかるのを防ぎ、セラミックや天然歯の破折を予防します。
  • 咬筋ボツリヌストキシン注射: 過剰に発達したエラ(咬筋)の働きを薬の力で和らげ、食いしばる力を物理的に弱めます。

② 脳神経を修復する「栄養素」

最近の研究では、特定の栄養不足が歯ぎしりに関与することが分かっています。脳の神経を保護し、自律神経を安定させるために、以下の栄養素を意識しましょう。

  • ビタミンD(鮭、きのこ類): 脳内の酸化ストレスを軽減し、神経細胞を保護します。
  • マグネシウム(アーモンド、豆腐、ほうれん草): ストレスホルモンの過剰な分泌を抑え、自律神経を整えます。
  • オメガ3系脂肪酸(青魚、サーモン): 脳内の免疫細胞の暴走を抑え、抗炎症に働きます。
  • 食物繊維(野菜、果物): 最新の研究で、食物繊維の摂取量が少ない学生ほど歯ぎしりが多いことが報告されました(2)。腸内環境を整えることで、良質な睡眠に不可欠なホルモン(セロトニン・メラトニン)の分泌を促します。

③ 専門機関での「根本ケア」

重度の睡眠時無呼吸症候群やメンタルヘルスの不調が疑われる場合は、歯科治療だけでなく、睡眠外来や精神科などのプロフェッショナルによる適切な治療が最優先となります。

最後に:「美味しい食事」が歯ぎしりを和らげる?

脳の海馬は「新しい情報」と「生存価値(美味しい・嬉しい)」を同時に検知すると、快楽物質であるドーパミンを分泌して神経回路を強化します。つまり、「栄養価が高く、美味しくて新しい食事」を楽しむことは、ストレスでダメージを受けた脳を回復させる最強のメソッドなのです。

歯ぎしりは、頑張りすぎている心と体からのサイン(SOS)です。 「最近、朝起きると顎が疲れている」「歯の擦り切れが気になる」という方は、ぜひ一度当院にご相談ください。口腔内のサインを見逃さず、あなたに合ったケアをご提案いたします。

【引用・参考文献】

  1. アンデシュ・ハンセン著 / 久山葉子訳『スマホ脳』新潮社, 2020.
  2. Toyama, N. et al. Nutrients Associated with Sleep Bruxism. J. Clin. Med. 2023, 12, 2623.
  3. Pavlou IA, et al. Nutrient insufficiencies and deficiencies involved in the pathogenesis of bruxism (Review). Exp Ther Med. 2023.↳
  4. Balasubramaniam R, et al. Sleep Bruxism: A Narrative Review of Current Concepts, Mechanisms, and Clinical Implications. J R Soc N Z. 2026.

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