COLUMNコラム
COLUMN 04
口臭が「腸活」を台無しにする!口臭と舌苔、全身の関係について
単なる病気の予防としての健康を、生活を豊かにする「ウェルネス」へのアップデートが注目されています。
ウェルネスの重要トピックとして語られる「腸内環境」や「腸活」はブームともいえるでしょう。
しかしながら、お口の衛生環境が保たれず口臭がある状態だと、せっかくの腸活が台無しになってしまう可能性があります。
口臭と舌苔、全身の関係についてお伝えします💡
口臭の原因の90%は口腔内
口臭は一部胃や小腸の疾患が原因となることもありますが、90%は口腔内に由来すると言われています。
口臭は、ほとんどが口腔内の不衛生が原因。
口臭の本体は、酸素がない環境で発生した嫌気性細菌細菌が、タンパク質をエサにして発生させる硫黄のガスです。(1)
酸素の届かない環境で嫌気性細菌が増える
口腔内に食べかすやプラーク(細菌の塊)、歯石が溜まったままになると、歯と歯ぐきのあいだの歯周ポケットの深いところに酸素の届かない領域ができます。酸素がない場所では、健康状態では増えないはずの嫌気性細菌(酸素を嫌う細菌)が増殖し、悪臭を放つガスを発生します。
酸素がない環境では「歯周病原細菌」も増殖します。歯周病は、骨に炎症が起きて骨吸収が進行している状態です。歯周病原細菌が増えたままだと骨はどんどん破壊されて、歯周ポケットは深く出血し、口臭が悪化します。
もうひとつの酸素が届かない場所は「舌苔」です。舌苔=tongue coatingで、舌の上にタンパク質の残骸などが溜まったもので、舌苔が厚くなると嫌気性細菌が増殖し、口臭の原因になります。

口臭の本体=VSC(揮発性硫黄化合物)
口臭の原因となる嫌気性細菌は、タンパク質が分解されたアミノ酸をエサにして揮発性硫黄化合物(VSC)を発生させます。VSCである硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドは硫黄を含む異臭を放つガスです。アミノ酸の原料は食べかす、血液、細菌の残骸などです。
口臭対策は、日常的に細菌の塊であるプラークとエサとなる残骸たちを日々掃除して、歯石がたまったら歯のクリーニングで除去するという、シンプルな物理的清掃がもっとも有効です。
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舌苔は歯ぐきの炎症でふえる
口臭対策=舌磨きのイメージが浸透していますが、あくまでも舌苔は嫌気環境のひとつです。
歯ぐきの炎症があると、舌苔が6倍増えるという報告もあります。(2)これほど一般的に「口臭=舌苔」といわれるのは、シンプルに舌苔は白いので見えやすく対処するモチベーションになりやすいとも考えられます。一方で実際に嫌気性細菌の温床となる歯と歯の間の食べカス、歯ぐきの境目にあるプラーク、歯石は自分では見えにくく、見過ごされている可能性があります。
舌磨きがまったくいらない、という意味ではありません。フロス&ブラッシングのポイントを抑えたほうが、口臭対策としての効率がいいという話です。
口臭を放置すると腸内細菌が乱れる
口臭を放置する=嫌気環境を放置するということなので、歯周病原細菌が増殖するリスクが高いです。
とくにP. gingivalis(ジンジバリス)やFusobacterium(フソバクテリウム)が、小腸や肝臓、心臓や脳など、あらゆるところから見つかっています。歯周病原細菌が全身に運ばれる経路はおもに2つ。一つは血管に入り込んで血流にのって全身に運ばれる経路。もうひとつは「飲み込み」です。
なぜ歯周病原細菌が、胃酸を通過できるのか?
P. ジンジバリス自体は酸に弱い細菌のため、これまでは胃酸で殺されると考えられていました。ところが近年、P. ジンジバリス単体ではなく、あらゆる細菌が塊になったプラークの状態だと、胃酸をスルーしてしまう可能性が示唆されています。プラークを構成するフソバクテリウムがアミノ酸を分解してアンモニアを発生し、自分らの周りだけ弱アルカリ性をつくり、強酸性の胃酸を無効化してしまうことが分かりました。また、ピロリ菌の感染や逆流性食道炎の治療で胃酸が弱くなっていると、P. ジンジバリスはより通過しやすくなります。小腸に届いたP. ジンジバリスが腸管バリアを破壊して、細菌叢の乱れや炎症を引き起こします。(3)
口臭対策
口臭対策は、食べかすや細菌や残骸、歯石などを綺麗に掃除することが最優先。
お昼の後は【1分でも歯磨き】。
基本的に口臭は「食べかすとプラークが溜まっておらず、歯石もとれている」状態であれば、他人が不快になるような臭いはしません。
お昼ごはんを食べた後、午後の口臭が心配な方は、マウスウォッシュよりも【ブラッシング】がいちばんおすすめです。
生ごみを温かい室内に置いたままにしておいたら、帰ってきたときに嫌な臭いがしますよね?口腔内は温かく、食べカスを放置するとこれに近い状態が起こっています。
歯磨き粉すらつけず、ささっと食べかすを落とすのが、実は最も即効性のある口臭対策です。
イベント前には【歯のクリーニング】
至近距離でお話するイベントなどで口臭が心配なときは、イベント前1週間以内に歯科医院で歯のクリーニング(歯石除去)を予約。磨きにくいところを評価してもらうことも重要です。
舌磨きするなら優しく
多少刺激がないと「磨いているかんじがしない」と、がしがしやっている方をときどき見かけます。
舌磨きの目的は、分厚い舌苔の中に嫌気性細菌がふえないように、粘膜を露出させることです。
舌の粘膜をじかにごしごし擦ってしまっては、粘膜に傷がつき、かえって舌苔が付きやすくなります。
イチオシの舌ブラシはSHIKIENのW-1です。
ほかのブラシを使っていると物足りないと感じるかたも多いようですが、粘膜を傷つけずに優しく舌苔を落とすのに非常に優秀な製品です。
自己流ケアを卒業
実際のところ、周囲が気になるレベルの口臭は「本人が気にしていない」ケースがほとんどだったりします。
逆に「口臭が心配」という人ほど、歯医者的には全く気にならず、定期的なクリーニング&歯科医院でケアを習い、綺麗にされている方が多いです。
自分の臭いを客観的に自覚するのは難しい。無自覚な口臭は、信用を損なうリスクになりかねません。
自己流を卒業して、プロフェッショナルケアをはじめましょう。
引用
1.Rajasekaran JJ, Krishnamurthy HK, Bosco J, Jayaraman V, Krishna K, Wang T, Bei K. Oral Microbiome: A Review of Its Impact on Oral and Systemic Health. Microorganisms. 2024 Aug 29;12(9):1797. doi: 10.3390/microorganisms12091797. PMID: 39338471; PMCID: PMC11434369.
2.Carda-Diéguez M, Rosier BT, Lloret S, Llena C, Mira A. The tongue biofilm metatranscriptome identifies metabolic pathways associated with the presence or absence of halitosis. NPJ Biofilms Microbiomes. 2022 Dec 19;8(1):100. doi: 10.1038/s41522-022-00364-2. PMID: 36535943; PMCID: PMC9763428.
3.Bostanghadiri N, Kouhzad M, Taki E, Elahi Z, Khoshbayan A, Navidifar T and Darban-Sarokhalil D (2024) Oral microbiota and metabolites: key players in oral health and disorder, and microbiota-based therapies. Front. Microbiol. 15:1431785. doi: 10.3389/fmicb.2024.1431785
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