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COLUMNコラム

COLUMN 02

ホワイトニングで歯の寿命は縮まる?ホワイトニングの安全性と注意点について解説

ホワイトニングで歯の寿命は縮まる?ホワイトニングの安全性と注意点について解説

医療ホワイトニングは一般的になりつつあるものの、ホワイトニングの薬剤は歯にダメージを与える不安から施術を決められない方はまだ多いようです。ホワイトニングのメカニズムと痛みの原因、禁忌(ホワイトニング施術を行ってはいけない方)、過酸化水素によるダメージと医療ホワイトニングの安全性、最後に当院での工夫について解説します。

1過酸化水素によるホワイトニングのメカニズム

過酸化水素は殺菌洗浄、漂白など幅広い用途に使用されています。一般的な医療ホワイトニングには過酸化水素または過酸化尿素を使用します。過酸化水素はおもにオフィスホワイトニングで使用され濃度は25~35%で医院によって濃度は異なります。過酸化尿素はホームホワイトニングで使用され、温度や光で分解される過酸化水素を安定させるため尿素を含み、過酸化水素濃度を換算すると約1/3です(例えば10%過酸化尿素に含まれる過酸化水素濃度は約3.3%)。消毒薬として使われるオキシドールは過酸化水素濃度3%です。

歯が黄色く見える原因は歯の内部にある象牙質の色が透けて見えるからです。象牙質はコラーゲンなどの有機物を多く含みます(皮膚の黄色みと同じ)。過酸化水素が象牙質に到達するとフリーラジカルを発生させて有機着色物を酸化し、炭素原子の二重結合が解除され小さい分子に変化することにより漂白が起こります。*1

2ホワイトニングによる痛みの原因

2.1 一過性の神経への刺激

過酸化水素によるホワイトニングは有機着色物を酸化するときに発生する酸素の泡が象牙細管(内部の象牙質に通るミクロの管)を通じて歯の神経を刺激し、一過性に神経の炎症を引き起こし痛みがでます。*2

2.2 長時間の施術や知覚過敏により強い痛みを感じる可能性が高い

過酸化水素による歯の神経への影響は基本的には一過性のものです。しかし歯に薬剤を長時間のせてしまうと神経への刺激は多くなり、神経の炎症は持続する可能性があります。*3

また30代以降、矯正治療経験者、ブラッシング圧強い、歯周病が進行していると歯肉退縮(歯ぐきのさがり)があり歯の根元で象牙質が露出していると知覚過敏がおこります。この部位にホワイトニング剤を塗布してしまった場合は強い痛みががでてしまいます。

歯ぐきがさがり根元(歯根)が露出している=歯肉退縮

3ホワイトニング禁忌

一過性の痛みやホワイトニング剤の安全性はすべて健康な歯に対して行った場合です。前提条件としてホワイトニングを行えない方がいる点には注意が必要です。*4

3.1 無カタラーゼ症

過酸化水素のホワイトニングは人体に備わっているカタラーゼという酵素の反応によって生じますが、もともとこの酵素がなく過酸化物を分解できない方はホワイトニングを行えません。

3.2 むし歯がある・知覚過敏の症状がある

基本的に薬剤を塗布する前歯でも塗布しない奥歯であっても、大きなむし歯がある場合はむし歯の治療が優先です。歯の神経は繋がっているため薬剤を塗布した前歯が受けた刺激がむし歯で弱っている奥歯に伝わって激痛が走る可能性はゼロではありません。またもともと知覚過敏がある方はすでに歯の神経の炎症があり薬剤が強く刺激し強い痛みを誘発する可能性が高いです。

3.3 妊娠、授乳中 

過酸化水素による妊婦、乳児への安全性は確立されていないため妊娠・授乳が終わってからホワイトニングを行いましょう。

歯に対する影響とホワイトニングの安全性

4.1 そもそも歯にとって『ダメージ』とは

歯にとっての一番のダメージは酸性物質によって歯のミネラルが溶け出す脱灰です。酸は炭酸やレモン水などの直接的な酸とむし歯の原因であるミュータンス連鎖球菌から産生される酸の二つに分けられます。カルシウムとリンの結晶である歯のハイドロキシアパタイトは臨界ph5.5~5.7を下回ると酸によって分解され、唾液の緩衝作用によって中性に戻ります。例えばお酢のドリンクを一日に何回も飲む、お菓子やジュースがお口の中に滞留しミュータンス連鎖球菌による酸酸性が持続して起こると歯に穴があいてしまい、むし歯になります。お口の中が酸性から中性に戻るまでに要する時間を表した曲線のことをステファンカーブといいます。*5

(『医療法人恵優会 NEWS』より引用)

4-2 35%過酸化水素=pH2.5だが、低濃度ジェル&LEDライトの研究がすすんでいる

長年使用されてきたオフィスホワイトニング剤は基材が過酸化水素35%と高濃度でpH2.5付近の酸性薬剤でした。しかし近年で過酸化水素に触媒などを配合し中性付近のジェルを歯の面に塗布しても十分な漂白効果が得られることが分かりました。つまり過酸化水素は酸性でも、歯の表面に塗布するジェル自体は中性~アルカリ性付近のホワイトニング剤が多く使われています。

過酸化水素による神経の炎症やエナメル質への影響を考慮して近年では世界的に比較的低濃度の過酸化水素を使用する流れがあり、神経の炎症と痛みを最小限に抑えるためにさまざまな工夫がされています。日本で承認さている薬剤のTionオフィスは特殊な光触媒(V-CAT)を使用することで過酸化水素濃度を約23%に抑えて漂白効果を得ることに成功しました。*4またホワイトエッセンスホワイトニングプロではpH調整剤や炭酸塩を混和することで過酸化水素濃度を24%以下に抑え、さらに照射器WEライトによる強力なLEDにより照射時間を短くすることで痛みに配慮したホワイトニングを開発しています。*6

4-3 過酸化水素によって生じるホワイトスポットは日常生活で再石灰化されて元に戻る

オフィスホワイトニング剤を使用すると「ホワイトスポット」といって白斑がうきでることがあり、これが最も一般的に歯のダメージといわれる要因です。ホワイトスポットは歯のミネラルが溶け出し歯の結晶構造がやや弱くなっていることを示します。もともとミネラル成分が弱いところにジェルを塗布するととくに過酸化水素が反応して歯のミネラル成分が溶け出します。とはいえジェル自体が中性~アルカリ性であれば10~30分間の間ずっと歯のミネラルが溶け出すわけではありません。さらにホワイトニング後にハイドロキシアパタイトのペーストでコーティングしたり毎日ペーストを使用することで溶け出したミネラルを補給することは可能ですし、唾液中のカルシウムやリンで再石灰化がおこり、ホワイトニング数日~数週間後にはもとの状態に戻ります。

過去の症例です。30代前半女性、オフィスホワイトニング前にはうっすらホワイトバンド(歯の縞模様)がみられ、もともと歯のミネラル成分がうすいところがみられます(1)。オフィスホワイトニング直後には白く浮きだった部分が目立ちますが(2)、5か月後の来院では白斑は消失しています(3)。ホワイトニングにより一時的にミネラルが抜け落ちたものの、日常生活で再石灰化が促進されたと考えられます。

4-4 学術論文で「実験室内の検証で過酸化水素がエナメル質の性質を弱めた」という報告があるが、一時的か永久的な変化かは議論が分かれている

過酸化水素によるホワイトニングが歯のエナメル質に永久的なダメージを起こすかはどうかはいまだ議論が分かれています。歯の表層にあるエナメル質の構造を変化させたという報告と変化しなかったという報告どちらもあるのが現状です。実験室下で歯の脱灰を示した報告はあるものの、人体ではホワイトニング後に唾液などによる再石灰化も起こります。「実験室下で過酸化水素入り薬剤がエナメル質の脱灰を示した」という報告を根拠にして「過酸化水素は歯に永久的なダメージを起こす」と表現するのは明らかにミスリーディングです。*7

4-5 ホワイトニングで歯の寿命が縮まる可能性は極めて低いと考えられる理由

以下は文献調査と臨床的知見をもとにした当院の意見です。

オフィスホワイトニングで歯のダメージが怖いとするならば、甘いものを食べたり飲んだり、お酒を飲んだ口のまま数時間以上過ごすほうがよっぽど長時間歯が臨界pH以下に暴露されています。『食事は毎日規則正しく食後は必ず歯を磨く、間食はしない、甘い飲み物やお酒はいっさい飲まない』という方にとってはオフィスホワイトニングで寿命が縮まるかもしれません。しかし現実的には日常生活で口腔内が酸性に傾く時間に比較するとオフィスホワイトニングの施術時間ははるかに短く、長い一生を考えたらオフィスホワイトニングが歯にとって致命的な影響を及ぼす可能性は極めて低いと考えています。*8

5 歯ぐきへの影響とホワイトニングの安全性

5-1 オフィスホワイトニングでは歯肉保護を行う

日本やEUでは過酸化水素使用のホワイトニング剤は一般販売(OTC医薬品)が禁止されており、自宅での個人の使用では誤った使用量により過酸化水素入り薬剤が歯ぐきに多量についてしまい歯ぐきがやけどのような白い状態になってしまい危険であるというのが主な理由です。

医院で行う場合はプラスチックで歯ぐきを保護するため基本的に薬剤が歯ぐきにつくことはありません。

当院での歯肉保護

5-2 ホームホワイトニングではジェルの量に注意

ホームホワイトニングでは過酸化尿素10~22%(過酸化水素におきかえると3~7%程度)が使用されます。この濃度ではすぐに歯ぐきが白くなることはありませんがジェルの量が多すぎたり時間が長すぎる、歯肉退縮部位にジェルがつくと痛みが生じます。使用には歯科医師/歯科衛生士から適切にレクチャーを受けましょう。

6 当院での過酸化水素によるダメージを抑えた優しいホワイトニングの特徴

6-1 診断

問診と視診によってホワイトニングができない方(とくに大きなむし歯の有無)、知覚過敏の有無の把握を行います。ホワイトニングのときだけしみる、という方には以前のホワイトニングについて聴取し、薬剤を塗る範囲や量を調整して施術を行います。

6-2 薬剤

当院では過酸化水素薬剤にPAP+(フタルイミドペルオキシカプロン酸)ジェルを混和し、過酸化水素濃度を20~25%以内に抑えた薬剤を使用します。PAP+とは非過酸化物で酸化反応を起こさずに有機着色物を分解できる新しいホワイトニング剤で、さらに歯の主成分と同じハイドロキシアパタイトを含むことでホワイトニングにより抜け落ちたカルシウムやリンを補修します。*9

照射時間はトータル20分もしくは30分で塗布時間が長すぎないように配慮しています。

6-3 手技(施術経験)

歯肉保護にはプラスチック材を使用するなどオフィスホワイトニングの標準治療を遵守しています。院長はオフィスホワイトニング施術歴10年、使用薬剤は7種類を経験しており、歯に塗る薬剤の量や範囲はお客様ごとに最適量に調整しています。

(↓過去使用経験のある過酸化水素入りオフィスホワイトニング剤)

  • Opaleescence extraboost (過酸化水素35%)
  • Opaleescence quick PF
  • BEYOND
  • ポリリン酸ホワイトニング
  • Tionオフィスホワイトニング
  • ホワイトエッセンスプロ
  • 35%Dual barrel for professional teeth whitening(H.Z Industrial Development Cp.,Ltd)

6-4 アフターフォロー

ホワイトニング後のセルフケアで歯の再石灰化を促進することが可能です。白斑が生じた方にはハイドロキシアパタイトペーストやフッ素入り歯みがき粉の使用、歯肉退縮がある方の適切なブラッシング圧、脱灰をおこしにくい食生活アドバイスなどをさせていただきます。

過酸化水素による歯のダメージは全くゼロではありません。しかし適切な診断のもと適応を守り、過酸化水素濃度と施術時間を抑え、アフターケアと生活習慣の見直しができれば歯の寿命を縮めることなく安全で優しくホワイトニングすることができます。

参考文献

  1. Redha, O., Mazinanian, M., Nguyen, S. et al. Compromised dental cells viability following teeth-whitening exposure. Sci Rep 11, 15547 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-94745-w
  2. Lopes ACTA, Brondino NCM, Bombonatti JFS, Mondelli RFL. Effectiveness of violet LED with or without a bleaching gel: a 12-month randomized clinical trial. Front Dent Med. 2024 Oct 15;5:1427301. doi: 10.3389/fdmed.2024.1427301. PMID: 39917687; PMCID: PMC11797755.
  3. Veneri F, Cavani F, Bolelli G, Checchi V, Bizzi A, Setti G, Generali L. In Vitro Evaluation of the Effectiveness and pH Variation of Dental Bleaching Gels and Their Effect on Enamel Surface Roughness. Dent J (Basel). 2024 Dec 18;12(12):415. doi: 10.3390/dj12120415. PMID: 39727472; PMCID: PMC11674190.
  4. ティオンオフィス添付文書
  5. 医療法人恵優会 NEWShttps://keiyoukai.jp/wp/?p=4191
  6. WHITE ESSENCE ホワイトニングの成分についてhttps://www.whiteessence.com/whiteningguide/guide06.php
  7. Müller-Heupt, L.K.; Wiesmann-Imilowski, N.; Kaya, S.; Schumann, S.; Steiger, M.; Bjelopavlovic, M.; Deschner, J.; Al-Nawas, B.; Lehmann, K.M. Effectiveness and Safety of Over-the-Counter Tooth-Whitening Agents Compared to Hydrogen Peroxide In Vitro. Int. J. Mol. Sci. 2023, 24, 1956.
  8. 日本歯科医師会 お口と全身の健康を学べるWebマガジンhttps://www.jda.or.jp/happysmile/healthchek/index.html
  9. Pascolutti M, de Oliveira D. A Radical-Free Approach to Teeth Whitening. Dent J (Basel). 2021 Dec 9;9(12):148. doi: 10.3390/dj9120148. PMID: 34940045; PMCID: PMC8700120.

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