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COLUMNコラム

COLUMN 01

トランセントホワイトニングと従来の医療ホワイトニングの違いとは?痛みの原因と正しい選び方

「薬剤を使わないから痛くない」と近年SNS等で話題を集めているトランセントホワイトニング。一方で、従来の過酸化水素を使用したオフィスホワイトニングに対し、「歯にダメージがあるのでは?」と不安を抱く方も少なくありません。

本記事では、10年以上の臨床経験を持つ歯科医師の視点から、両者のメカニズムの違い、メリット・デメリット、そして「本当にご自身の歯に合ったホワイトニングの選び方」を科学的根拠に基づいて徹底解説します。


1. トランセントホワイトニングの仕組み(従来型との違い)

近年登場したトランセントホワイトニングは、従来の「過酸化水素(漂白剤)」を使用せず、光のエネルギーを活用して歯を白くする新しい施術です。

圧倒的な光の「出力」と「波長」

トランセントホワイトニングで使用される機器(高出力パルス青色LED光照射器)は、一般的な医療ホワイトニングのライトとはスペックが大きく異なります。

学術データによると、一般的なホワイトニング用LEDが【出力600mW/cm2・波長405±10nm】であるのに対し、トランセントは【出力8000mW/cm2・波長450nm】と、10倍以上の強力な出力を持っています。

光で白くするメカニズム(光化学反応)

歯の黄ばみの原因である内部の色素は、高分子であるため光を吸収しやすく、色が濃く見えます。

従来のホワイトニングが過酸化水素の酸化反応でこの色素を分解するのに対し、トランセントホワイトニングは強力な光エネルギー(光化学反応)によって色素を分解します。これは、美容皮膚科で行われる肌のシミ取り治療(フォトフェイシャル)に非常に近いアプローチと言えます。

相場としては特殊な高出力機器を使用するため、1回あたり4〜6万円と一般的なオフィスホワイトニングよりも高価格です。


2. 従来の「過酸化水素」は歯にダメージがある?

トランセントホワイトニングを行うクリニックのHPには「従来の薬剤を使用したホワイトニングは、歯や歯茎に変性を引き起こす可能性があります。」と記載されています。過酸化水素で歯が脆くなるときいたからしない、という声もきくようになりました。

混乱しやすいポイントを整理していきます。

知覚過敏・歯のダメージ=副作用

過酸化水素を用いた漂白は、世界中で長年行われており臨床的な安全性は確立されています。しかし、「知覚過敏」や、ミクロレベルでの「エナメル質の微細な形態変化(ミネラルの喪失=脱灰)」といった副作用が存在するのは事実です。

医療において「全くリスクのない薬」は存在しません。重要なのは、そのリスク(副作用)を正しくコントロールし、適切なアフターケアを行うことです。

高濃度(35%)の薬剤が引き起こす激痛問題

ホワイトニングは、過酸化水素の濃度が高いほど効果を示しますが、知覚過敏や歯のダメージも重症になる傾向があります。

かつて主流だったアメリカ製の35%高濃度過酸化水素は、確実な漂白力と引き換えに強い痛みやホワイトスポット(白濁)を引き起こす原因となっていました。現在では、20%〜24%程度の低濃度に抑え、pHを調整して痛みに配慮した製剤が開発されています。

しかし、知識のアップデートが遅れている一部のクリニックでは未だに高濃度製剤が使用されており、これが医療ホワイトニング=激痛というトラウマを生む原因となっています。

歯ぐきの変性は知識・技術不足

高濃度の過酸化水素は歯ぐきにつくとやけど起こすため、標準手順ではガムダムといって光硬化型レジン(プラスチック)で歯ぐきを保護します。ところが、技術が不十分な術者が行ったり、この手順を省略・または十分な保護を行えない安価な材料で代用しているクリニックがゼロではありません。施術中に歯肉にホワイトニング剤がつく事態は、本来歯科医院側が最新の注意を払って避けるべきトラブルです。

歯科業界全体を見渡せば、過酸化水素によるホワイトニングの知識・技術不足は改善しなければならない問題だと考えています。


3. トランセントホワイトニングのメリットと注意点

トランセントの主なメリット

薬剤を使わないことによる最大の恩恵は以下の通りです。

  • 薬剤による知覚過敏(キーンとする痛み)がない

  • 施術後の食事制限が一切不要

  • 妊娠中・授乳中、または歯列矯正中の方でも施術可能

  • テトラサイクリン歯(生まれつきの変色)にもアプローチ可能

  • 照射時間自体が「約10分」と短い

    歯肉保護などの準備には時間がを要しますが、チェアの上で長時間じっとしているのが苦手な方には大きなメリットです。

知っておくべき注意点

過酸化水素のホワイトニングの副作用と同じように、トランセントもリスクがゼロではありません。

「熱」による痛みと火傷のリスク:

薬剤の痛みはありませんが、超高出力の光を照射するため、歯肉や神経に「熱さ(熱感)」を感じる場合があります。粘膜を保護する術者の高い技術が求められます。

クリニック(術者)による結果の差:

機械が同じでも、術者の知識や技量によって安全性や白さの仕上がりに差が出やすい施術です。口コミ等をしっかり確認して医院を選ぶ必要があります。

深い層へのアプローチの限界: トランセントの口コミを見ると「高価なわりにすぐに色戻りした」という声も。トランセントの波長450nmは比較的短く歯の表面側の浅い色素の脱色には適していますが、深層の色素沈着には限界があります。これは施術時間に限界があるオフィスホワイトニングも同じです。歯の内側の象牙質の黄ばみをしっかり抜くには長時間弱い薬剤を浸透させるホームホワイトニングのほうが白くなる場合があります。


4. アフターケア(ダメージ補修)」の重要性

トランセントのデメリットは高価格帯であることです。予算の都合で従来型(過酸化水素)」のホワイトニングを選ぶ場合、絶対に欠かしてはいけないのが「ダメージ補修」です。

これは、美容室でのヘアカラーと同じ。美しいハイトーンを作るためにブリーチ(脱色)をしたら、必ず高品質なサロントリートメントで髪を補修しますよね。歯のホワイトニング後もご自宅のケアは欠かせません。

知覚過敏ケア(ブラッシングの最適化)

硬い歯ブラシでの強い摩擦は知覚過敏を悪化させます。施術後は必ず「柔らかい毛先(ウルトラソフト)」の歯ブラシを使用し、硝酸カリウム等の知覚過敏予防成分が含まれたペーストで優しくケアしましょう。

ハイドロキシアパタイトによるミネラル補給

過酸化水素によって一時的に失われたミネラル(脱灰)は、唾液の力で自然に再石灰化されますが、その修復を強力に後押しするのが「ハイドロキシアパタイト(カルシウムとリンの結晶)」です。施術直後にこの成分を補給することで、歯のツヤを守り、色戻りを防ぐことができます。


あなたに最適なホワイトニングの選び方

痛みを絶対に避けたい・食事制限をしたくない・妊娠/授乳中

➡高い技術を持つクリニックでトランセントホワイトニング

コスパ重視

➡低濃度(20~24%)の過酸化水素剤を使用し、術後の「ハイドロキシアパタイト補修」までをセットで行ってくれる、アフターケア体制の整ったクリニックでオフィスホワイトニング

痛みのリスク・予算を考慮して、自分に合った方法でホワイトイングを行うことが大切です。

【参考文献】

1. 日本歯周病学会会誌 63巻 suppl-1号 O-11. 矯正治療中の授乳期女性に対し過酸化水素水漂白剤不使用にて高出力パルス青色LED光照射器を用い歯牙変色改善を図った臨床報告(平野絵美, 大工園則雄)

2. Takeuchi EV, et al. Influence of blue and violet LED and infrared laser on the temperature of bleaching protocols in different concentrations of hydrogen peroxide. Photodiagnosis Photodyn Ther. 2024.

3. Paini TRD, et al. Bleaching at acidic and basic pH for enamel and dentin whitening using internal and external techniques. Braz Oral Res. 2025.

4.Zhao X, Pan J, Malmstrom H, Ren Y. Treatment Durations and Whitening Outcomes of Different Tooth Whitening Systems. Medicina (Kaunas). 2023 Jun 12;59(6):1130. doi: 10.3390/medicina59061130. PMID: 37374334; PMCID: PMC10302806.

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